Statement of Purpose


Statement of Purposeは、日本語でいうと志望動機書となります。日本の大学・大学院の出願手続きでは提出が求められないため、どのような書類かイメージするのが難しいですよね。

Statement of Purposeは、「この大学でこの分野の勉強がしたい!」とアピールするための非常に重要な書類です。むちゃくちゃ大事な書類です。審査員が必ず目を通します。何度も何度も読み直し、誤字脱字はもちろん、少しでも文章の完成度を上げるように修正・再修正を繰り返して作り上げる必要があります。

このStatement of Purposeですが、受験する大学院によって異なった設問があり(といっても、基本的に問われる内容は同じですが)、その設問に対する回答を書く必要があります。ここでは、いくつかの大学院の設問の具体例を見ながら、Statement of Purposeでどのような内容が求められているのかを解説したいと思います。(最新の設問は各大学のサイトでご確認ください。大体毎年同じようですが)

Requirements for Statement of Purpose


コロンビア大学 大学院
専攻:Graduate School of Arts and Sciences

Statement of Purposeの設問は次のようになっています。

Your statement of purpose will aid the Admissions Committee in evaluating your application. Please compose a succinct statement of approximately 500 words concerning your past work and preparation related to your intended field of study, your academic plans for graduate study at Columbia, and your subsequent career objectives. If you are currently in a graduate program at another university, please explain why you wish to leave. If you are not currently enrolled in an academic program, please describe your activities since you were last registered.

大学院への出願ですので、大学に所属していることが前提となっています。

設問を簡単に翻訳しますと、興味のある専攻分野に関して、これまでにどのようなことを実施(準備)してきましたか、コロンビア大学の大学院でどのような調査・研究をしたいですか、大学院卒業後にはどのようなキャリアを目指しますか、などが聞かれており、500文字で簡潔に答えなさいと書いてあります。また現在他の大学に所属している場合は、何故、そこを離れてコロンビア大学の大学院に進学したいのか、理由を述べなさい、もしくは、現在どこにも所属をしていないのであれば、以前に在籍していた際に何をしていたのか述べなさい、と書いてあります。

後ほど他の大学院の具体例も紹介しますので、比較してもらえれば分かるかと思いますが、「今まで何をしてきたか」、「大学院で何をしたいか」、「大学院を卒業した後に何をしたいか」、「何故、この大学院へ進学したいのか」、この4点セットは回答必須です。まず間違いなく聞かれます。この4つの問いには必ず答えれるように準備をしておく必要があります。

また文字数の制限があることに気がつきます。500文字はwordで1.5ページ程度の分量となります。他の大学院も同じくらいの分量が求められます。

では、引き続き、別の大学院のStatement of Purposeの設問を見てみましょう。


UCバークレー大学 大学院

専攻:Graduate Program

Please describe your aptitude and motivation for graduate study in your area of specialization, including your preparation for this field of study, your academic plans or research interests, and your future career goals. Please be specific about why UC Berkeley would be a good intellectual fit for you.

先回と同様に、「興味のある分野において、どのような準備をしてきたか」、「調査・研究の計画はどのようなものか」、「将来のキャリアゴールは何か」、「何故、UCバークレーへの進学が最適だと考えるのか」、の4点セットが聞かれています

文字制限は無いですが、余りダラダラと長文にすると伝えたいメッセージがぼやけてしまいますので、A4で2ページ位、文字数にすると最大でも700文字程度の文章でまとめれば十分です。


スタンフォード大学  大学院

専攻:Graduate Program

The statement of purpose should describe succinctly your reasons for applying to the proposed program at Stanford, your preparation for this field of study, your study and research interests, future career plans, and other aspects of your background and interests which may aid the admissions committee in evaluating your aptitude and motivation for graduate study. Your statement should not exceed two pages in length.

これまでと同様に、お決まりの4点セットが問われています。またバックグラウンドや関心事など、大学院で学びたいというやる気を審査員にアピールできる他の追加情報があれば、紹介しても良いと書かれています。

冒頭にSuccinctly(簡潔に)とあります。これはStanfordに限った話ではありませんが、同じ主張や説明を何度も繰り返したり、本筋とは関係の薄い話を長々と紹介することは、審査員の印象をかなり悪くします。審査員に対して、言いたい事が正しく明確に伝わるように、要領を得た文章となるように心がける必要があります

分量が文字数ではなく2ページまでと指定されています。 手を抜いていると思われると困るので、2ページ目の半分以上は文章があったほうが良いですが、どうしてもネタが尽きてしまった場合は、多少短くても良いです。ダラダラと意味の無い文章でスペースを埋めるのだけは避けるべきです。


以上でStatement of Purposeの設問の紹介を終わりたいと思います。いかがでしたか?

基本的にどの大学院でも設問内容に大差が無いことが分かったと思います。つまり、どこか1つの大学院のStatement of Purposeを作ってしまえば、細かい情報を変更するだけで、他の大学院への応募に資料の使い回しができるということです

次に、どのような文章・構成にすれば、審査官に高く評価してもらえるStatement of Purposeを作ることが出来るのか、解説を行いたいと思います。

How to make Statement of Purpose



良いStatement of Purposeとは、以下の全ての項目が達成されている文章です。どれか一つ抜けいてもダメだと思ってください。Statement of purposeは、TOEFLのライティングのように時間制限がある訳では無いので、書いた文章を何度も読み返し、修正を繰り返しながら文章を作り上げてみてくださいね。


(1)設問に対する回答が述べられている
先回でも紹介していましたように、基本的な設問は次の4点セットでしたよね。
・目標の達成に向かって、どのような準備をしてきたのか
・大学院でどのような調査・研究を行いたいのか
・卒業後にどんな目標・キャリアを目指すのか
・何故、その大学を受験するのか
この問いに対する回答が欠けていたら、当然良い評価はされません

(2)文章の構成がしっかりと組み立てられている
最初から最後まで、要点が論理的な順序で述べられている文章である必要があります。
良く使われる構成は、次のような3段落で書かれた文章です。
・イントロダクション
英語の文章では、一番大事な主張を最初に書くのが一般的です。イントロダクションの中で、皆さんの意見や考えがどのようなものかを明確に書く必要があります。
・サポート
イントロダクションの意見や考えをサポートする文章が続きます。何故そのような意見を持っているのか、何故そのような考えに至ったのか、審査員が理解・納得できるように詳細な説明をサポート部分でします。
・結論
最後にイントロダクション、サポートの段落で書いた内容を総括して述べます。

文章の構成がバラバラだと、「この志願者は論理的に物事を考えることが出来ない」、「論理が一貫しておらず考えが浅い」、といった印象を審査員が受けるかもしれません。構成には十分に気を付けて書く必要があります。

(3)文章を簡潔に書く
文章はあくまでも簡潔に書く必要があります。本題と関係のない文章が続いてしまうと、それは論理的な文章とは言えません。

(4)英語のレベルが十分に備わっていることが読み取れる
当然、ネイティブのような文章を書くのは不可能ですが、余りにも稚拙な文章となってしまうと、「この学生は入学してから授業についていけない」と審査員に判断されかねません。

Examples of Statement of Purpose


先回で紹介したStatement of Purposeの書き方をまとめますと、「設問に対する回答を、文章の構成を組み立てながら、簡素に、ある程度のレベルの英語で書く」となります

これまで何度もご紹介しましたように、基本的な設問は以下の(a)~(d)の内容です。
(a) 勉強したい分野へのこれまでの準備を紹介しながら、大学院で勉強したいという熱意を示してください。

(b) 調査計画や研究の興味を紹介しながら、大学院で勉強したいという熱意を示してください。
(c) 将来のキャリア目標を紹介しながら、大学院で勉強したいという熱意を示してください。
(d) 何故、その大学院があなたの勉強したいという熱意を満たすために最適だと思うのか述べなさい。

それぞれの設問への回答を、イントロダクション・サポート・結論の3段落に組み込んでいきます。

Statement of Purposeの例文を用意しましたので、そちらを使用して解説をしていきます。大学院で言語学を勉強したい学生という設定です。

イントロダクション
I was exposed to in-house communication with different languages since I grew up in a multilingual household from a young age. Naturally, I learned to speak the languages I was exposed to, but it wasn’t until I took a linguistics history course in high school that I became aware of the subtleties which characterized each language. I noticed that sublanguages exist all over the world in the form of dialects and colloquialisms specific to a particular region. This experience encouraged me to study linguistics and I decided to enroll in Tokyo University to take a first step to achieve my goal, being a translator which is able to travel the world enabling communication between different groups of people with different cultural and linguistic background.

サポート
When I visited to the New York University, I was immediately struck by the diversity of its students as well as the surrounding neighborhood. I strongly believe that an understanding of linguistics is inseparable from a study of different cultures, and a diverse environment such as that available at the New York University will be an invaluable opportunity for me to expose myself to new ideas and perspective. In addition, I look forward to taking advantage of the integrative curriculum in graduate school which gives students the opportunity to work on interdisciplinary projects with students from other majors, allowing me to explore the different areas my linguistics degree can take me. Through this interdisciplinary projects, I would like to reserach on how the difference of culture and linguist background changes a way of thinking and communication method amoung project members.

結論
Study in the field of linguistics encompasses sociology, psychology, and even facets of technology. The graduate school of New York University is known throughout the world for its strengths in all these areas, as well as for its pioneering faculty who each have made a clear impact on their fields of study. A degree in linguistic from the university will prepare me with a challenging curriculum, a culture of open-mindedness and understanding which will greatly help me in my career in the future.

まずイントロダクションでは、(a)への回答として、言語学を学びたいと思うようになった、これまでの準備(経緯)が紹介されています。次に(c)への回答として、将来は通訳者として活躍したいという目標が述べられています。
サポートでは、(d)への回答として、何故その大学が適していると考えるのか理由が述べられています。その後、(b)への回答として、どのような調査・研究をしたいかが紹介されています。
最後に結論では、(d)への回答を強調するとともに、大学院で学ぶことが将来の目標の達成に重要であることが述べられています。

この例文は、良いStatement of Purposeの条件である、、「設問に対する回答を、文章の構成を組み立てながら、簡素に、ある程度のレベルの英語で書く」を満たしています。
分量はこのままだとwordで1ページくらいにしかなりませんので、補足情報を充実させて文字数を増やす必要があります。より具体的な調査・研究内容や将来のキャリアの話を詳細に書くなどして対応すれば良いかと思います。


もう一つ、例文を紹介します。某添削サービス会社から引用しました。

イントロダクション
Since I was a child, I knew I was destined for a career in which I cold constantly ask why things were, and how they got to be that way. Starting at Age 7, I began attending a combined Elementary and Middle Magnet School for the sciences, which exposed me to scientific thinking and concepts from a young age. I became highly interested in cancer research in high school, and knew that I wanted to further explore that field. I majored in Biology in college, with the hope that it would provide me with the necessary skills and perspective to become a logical and self-starting researcher. A Master’s degree in Molecular Biology from Tokyo University will enable me to continue to pursue my research interests while helping to shape my thinking to prepare me for continued schooling or a position in industry.

サポート
My previous research experience has been critical in shaping my perception of the scientific world, and has given me insight to the niche I would like to fill in the field. From my freshman to senior year in college, I worked in the lab of Dr. Tanaka, studying the role of different transcription factors in driving tumor growth and metastases. I had the opportunity to work with several different mouse models, as well as with sequencing human tumor samples. This experience gave me the opportunity to aspire to do the same type of translational research in the future.

結論
My goal is to obtain a position in industry, where I can gain perspective as to the latest developments in the field. Tokyo University is regionally known for partnering closely with several different industry leaders and placing graduates in highly desirable positions. I hope to be able to return to school after experiencing industry, and being able to potentially run my own laboratory for independent research. A master’s in Molecular Biology is a highly versatile degree, and matches with my goal of developing into an independent scientist.

分量が足りない点は無視するとして、これは良いStatement of Purposeと言えるでしょうか?

設問に対する解答を見てみますと、
(a) 勉強したい分野へのこれまでの準備⇒イントロダクション、サポートで説明されています。
(b) 調査計画や研究の興味⇒記述がありません。
(c) 将来のキャリア目標⇒イントロダクション、結論で説明されています。
(d) 何故、その大学院が最適か⇒結論で紹介されています。
となり、調査・研究の内容が不足していることが分かりますそのため、私は良いStatement of Purposeだとは思いません

大学院で何をしたいか、というのは非常に重要な項目であり、この説明が不足していると、「勉強したい分野へのこれまでの準備」から「将来のキャリア目標」までの論理的なロードマップ(道筋)が見えてきません。

設問に対する回答を、文章の構成を組み立てながら、簡素に、ある程度のレベルの英語で書く必ず意識しながらStatement of Purposeを作って下さい。

Complementary Information


Statement of Purposeで必要な英語力はどの程度でしょうか。

当然ネイティブのような文章はかけませんが、余り稚拙な文章とならないように気をつけたいところです。


主語・動詞・目的語・補語などの基本的な文型の繰り返しになると、文章が単調に見えてしまいますので、分詞構文や比較などを散りばめながらメリハリのあるStatement of Purposeを目指しましょう!

おそらく多くの受験生がStatement of Purposeを作成する前に、何度かTOEFLを受験しているかと思います。

 

私はTOEFLのWritingが25点以上あれば、良いStatement of Purposeを作成するのに足りる英語力だと考えていますWritingで25点以上あれば、基本的な動詞の使い方などは問題無いと思います。また接続詞を使って、一つの文章がある程度長くなるように繋げることも出来る英語力だと思います。

Statement of PurposeはTOEFLのような時間制限は無いので、提出前に何度も読み直して、納得いくまで修正・再修正を繰り返してみてください。


以前、Statement of PurposeはWord A4で2ページ程度あれば良いというお話しをしました。

 

大学院によっては1ページ程度に抑える必要もあるのですが、分量は増やすよりも減らすほうか遥かに簡単ですので、まずは2ページ分を完成版として作成し、提出の際に各大学院の指示に従って分量を調整すれば楽できます

とはいえ、2ページの英語の文章を書くのが大変だと感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、分量を増やすための対策を紹介したいと思います。

Statement of Purposeで回答が必要な設問は次の4つでした。
(a) 目標の達成に向かって、どのような準備をしてきたのか
(b) 大学院でどのような調査・研究を行いたいのか
(c) 卒業後にどんな目標・キャリアを目指すのか
(d) 何故、その大学を受験するのか

この内、(c)の将来の目標やキャリアで分量を増やすのは結構難しいです。「将来はXXになってYYに貢献します」などの文章は、どうしても未来の仮の話になってしまいますので、長く書きますと論理性の欠けた夢物語のように見えてしまいます。

そのため、分量を増やすなら(a)、(b)、(d)で検討するのをおススメします

これまで大学でしっかりと勉強をしてきた方や、社会人経験などがある方は、(a)で文章を増やすのが良いと思います過去の経験・活動は受験者で千差万別ですので、ご自身に他の受験者と差別化できる実績があるのでしたら、アピールのため明記するべきです。

「XXという勉強・研究を頑張りました。詳細を説明するとYYという活動を行い、その経験を通じてZZを得ることが出来ました」といった内容で文章をつなげることが出来ます。

 

また客観的な評価を加えるのも良いでしょう。「頑張りました」だけでは主観的なので、この活動で成績Aを獲得した、学会で発表した、などエピソードを追加してやれば、自身の調査・研究に対する能力の高さも審査員にアピールが出来ます。

(b)は行いたい調査・研究の「背景」「(短期・長期)目的」「調査・研究方法」「成果の予測」などをまとめると良いです。

特に、どうして調査・研究を行いたいと思ったのか、その背景情報はしっかりと説明するべきです。「XXをやりたい」だけでは不十分となり、「YYの経験から、ZZをやりたいと考えている」といった説明が必要です。文章の論理性だけは必ず意識して書いてください

(d)では、XX先生の研究や講座が目標の達成に必要である、または大学のカリキュラム(産学連携や学生間の連携)などが目標の達成に貢献することを書けばよいです。大学HPを見ると、一人くらいは興味ある研究をされている教授がいると思いますので、分量が少ないと感じる方は、その教授のHPや論文を読んで書くネタを探すと良いでしょう。また大学の講座情報も大学HPに載っていますので、興味がある授業をピックアップするのも良いでしょう。

 

「YY大学のここが魅力的」と漠然とした内容を書くのではなく、「YY大学で得られる経験が目標の達成に貢献する」ことを書いたほうが良いです。何度も繰り返しとなりますが、ここでも論理性が必要です。論理的に文章を書くと、分量も多くなりますので、是非意識しながら文章を作ってみてください